2014年12月04日

エドワード・ルトワックの戦略論 その2

ルトワックの戦略論の続き、完結編


第二部 戦略のレベル
戦略には垂直的に5つのレベルがあり、さらに水平(地理的な要素)の側面があると指摘し、
垂直面の小さなレベルから議論を積み重ねていく。

旧ソ連軍を迎え撃つNATO軍の場合を題材に、高価な戦車部隊を安価な対戦車ミサイルで
迎え撃つ想定で、垂直レベルの戦略を小さなほうから考える。
各レベルは相互に影響があるため、上位レベルだけで下位を規定することはできない。

第5章:技術レベル
技術レベルでは、どのような兵器を開発するのか、技術者と軍人や政治家の関係も合わせて考察する。

第6章:戦術レベル
戦術レベルでは、地形や軍人の技能、リーダーシップ、士気などが要素に加わる。
1対1だと何とかなる対戦車ミサイルも、押し寄せる戦車部隊に対して苦しい。

第7章:作戦レベル
戦略と戦術の間のレベルを作戦レベルとしており、他の兵科が戦闘に参加してくる。

また、消耗と機動が重要な要素になってくる。
機動のイメージとしては、決められた戦場で戦うのではなく、お互いが索敵のためや有利な地形を得ようとして
移動することをになろうか。
また消耗は持久戦のような、物量が重要な要素となることである。

消耗と機動のどちらの様式を多く取り入れた行動をするかは、その国家が置かれた状況にもよる。
資源の有無や国土の面積などで取り得る作戦も変わってくる。

本書では代表的な機動の例として電撃戦を詳細に検討している。

第8章:戦域戦略 その1 軍事作戦と政治的選択
領土と結びつくと戦域レベルの戦略になる。
攻撃・防衛のどちらの重点をおくのか、その地域で核を利用できるのか、国土の縦深を利用して引くのか、である。

第9章:戦域戦略 その2 攻撃と防御
攻勢に出るときに広く前線を維持するのか、狭い地域に戦力を集中するのか。
前者は国力がある国家でないとできない。後者は相対的に小さくても可能だが、集中するリスクが大きい。

第10章:戦域戦略 その3 阻止攻撃と奇襲攻撃
縦深が取れなければ、阻止攻撃による防御がある。
阻止は砲兵や航空戦力によって実施される。

第11章:非戦略 海軍、空軍、核戦力
今までは主に陸軍を例にしていたが、ここで海軍、空軍、核戦力についても語られる。
それぞれの戦力には、それ単独で戦略を語れる向きもあるが、本書では単独の戦略はあり得ないとする。
戦域的な空軍力は、英語で言う「戦術的エアパワー」だろうとする解説が付いている。

第12章:戦略的エア・パワーのルネサンス
空軍戦力については、精密誘導によってRMAが進展し、過去とは全く違う様相を見せつつあることを述べている。
70年前にイタリアのドゥーエが夢見た戦略空軍力は、精密誘導武器を利用して湾岸戦争で実現されたとしている。


第三部 最終結果−−大戦略
第13章:大戦略の射程
ようやく最終的な大戦略に取りかかることになる。
国際政治との関係が切り離せなくなる。

第14章:武力による誘導
武力を直接使うのではなく、武力を用いた誘導で他の国家を行動させるようなことについて、本章で述べている。
抑止ではなく諫止(かんし、いさめて思いとどまらせること)という言葉を利用している。

第15章:戦争における調和と不調和
ここでも戦略の不合理について語られる。
一部の地域で勝っても、大局的には全く意味のない戦いもある。
垂直的な戦略の勝利により緒戦を勝ったとしても、水平的な戦略で失敗して最終的に負ける例もある。
第2次大戦の日独を例にしている。
特に、アメリカが対独戦に参戦するために日本を利用したことが淡々と記述されているのが目を引く。

第16章:戦略は有用か
最後にまた戦略の逆説について語られる。
垂直的に一貫した戦略は有効なのか、事が始まれば、実際の事象の動きは摩擦や線状の霧で覆い隠される。
全く戦略における論理とは直線的ではないのだ。



戦略の論理という名で、軍事・国際政治・平和に満ち溢れた逆説の真実を記述した一冊でした。
タグ:地政学 軍事
posted by じゃが〜 at 00:51| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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